会長挨拶

第13回日本司法精神医学会大会
会長 籠本孝雄

 青葉の候、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。平素から当学会の活動にご理解とご支援を頂戴しておりますことを心より御礼申し上げます。
 この度、平成29年6月2日(金)、3日(土)の両日に渡り、第13回日本司法精神医学会大会を大阪国際会議場(グランキューブ大阪)において開催することとなりました。
 平成13年6月、はからずも、ここ大阪で発生した附属池田小事件を契機として、触法行為を行なった精神障害者等の処遇に関心が高まり、平成15年7月には、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)が成立し、平成17年7月からは、同法に基づく新たな精神科医療が実践されるようになりました。そうした一方で、平成26年に新たに矯正施設等に収容された受刑者21,866人のうち、12.2%を占める2,673人は統合失調症等を有する精神障害者であり、この数は同年の医療観察法当初審判における入院決定数262人を大きく上回っているという現実がございます。英国や米国といったコモンローの法域では、触法精神障害者が矯正施設と精神科病院とを行き来しやすいことに対し、わが国においてはそうした仕組みは妥当しておりません。わが国の触法精神障害者の処遇について、私たちが生きる社会全体の文脈で捉えるのであれば、医療観察法による精神科医療に加え、矯正施設における精神科医療についても思索を深める意義が認められるように思われます。また、医療観察法施行後、同法による精神科医療導入の一要件として刑法39条の適用が必要とされていることも含め、刑法39条の法的効果の帰結として、矯正施設か精神科病院かという振り分け機能を指摘することができましょう。こうした問題関心から、今回の大会のテーマを「刑事司法と矯正医療における司法精神医学の可能性」といたしました。
 教育講演として、刑法学のお立場から、刑事責任能力論の第一人者である京都大学の安田拓人先生に「裁判員裁判のもとでの責任能力判断および精神鑑定のあり方」という演題でご講演頂きます。シンポジウムは二本企画いたしました。一本目が、「わが国の触法精神障害者処遇再考—矯正医療の視点から—」とさせて頂き、比較法的視点も取り入れつつ、医療観察法施行後のわが国の現状についてご議論頂きます。二本目は、「矯正施設における精神科医療」とさせて頂き、施設内の医療だけではなく出所後の地域移行までも射程にしてご議論頂きます。
 司法精神医学は、精神科医療と刑事司法の間だけではなく、精神科病院と矯正施設にもまたがる学際的な実践科学であります。本大会において、そこでの可能性について光を当てられればと考えております。
 最後になりましたが、今回の大会にご関心を持って頂き、是非とも、多方面からのご参加をお待ち申し上げております。